1私選弁護人を依頼するメリット(国選弁護人との違い)
- 国選弁護人と、私選弁護人(そちらの事務所)では何が違うのでしょうか。私選弁護人を選任するメリットは、何ですか。
- 弁護人として行うべきこと(基本的な業務)は、国選弁護人でも私選弁護人でも特段変わりません。
もっとも、国選弁護人との最大の違いは、「事件の枠を超えた生活サポート」が可能な点にあります。 - 刑事事件に関係のない、仕事の指示なども本人に伝えてもらうことはできますか。
- はい、可能です。
経営者や責任者の方であれば、「会社に残した部下や従業員への業務指示」や「取引先への対応相談」なども少なからずあると思いますし、逆に従業員が被疑者の指示を仰ぎたい場面もあるでしょう。
私選弁護人であれば、このような被疑者の社会生活へのダメージを、最小限に抑えるための橋渡し役を柔軟に請け負うこともできます。 - 被疑者からの仕事の指示を伝えてもらう際、伝えていただけない内容はありますか。
- はい、あります。
事件の証拠隠しや口裏合わせなど、弁護士の目から見て、「罪証隠滅(ざいしょういんめつ)」が疑われるような指示については、弁護士倫理に反するため、伝達することはできません。
あくまで社会生活を維持するための正当な業務連絡をお伝えすることになります。
2身体拘束されている事件の手続きの流れと弁護活動
① 逮捕から勾留(こうりゅう)請求まで
- 逮捕直後の段階で、弁護人による活動(釈放の働きかけ等)をしてもらうにはどうすればよいですか。
- 現状、逮捕直後の段階ではまだ国選弁護人が選任されない仕組みとなっています。
そのため、この時期に弁護活動を行うには、私選弁護人を選任する必要があります。 - 私選弁護人をお願いするかどうか、まだ迷っているのですが、何か方法はありますか。
- 当番弁護という制度があります。
弁護士会へ当番弁護の出動を依頼すると、その日に待機している弁護士が、一度だけ被疑者と無料で接見し、法的なアドバイスします。このとき出動してもらった当番弁護士を、そのまま私選弁護人として選任することもできます。
ただし、当番弁護は、事前にその日の担当者が決まっておりますので、特定の弁護士を指名して出動要請することはできません。 - 逮捕から勾留請求まで、どのくらいの時間的猶予があるのでしょうか。
- 法律上の制限時間は最大72時間です。
しかしながら、実際にはそれよりも短い時間で手続きが進むことがほとんどです。
例えば、月曜日の朝に逮捕され、火曜日の午前中に検察庁へ送致され、その日の午後には勾留決定されるというスケジュール感であり、実際にこの段階で弁護活動に割くことができる時間は24時間前後です。
そのため、身体拘束を解くための意見書提出や示談交渉、環境調整などは、極めて短時間のうちに集中的に行う必要があります。 - その短い時間に、弁護士は具体的に何をするのですか。
- 身体拘束を「逮捕」の段階だけに留める(早期解放)ための活動を行います。
具体的には、検察官に長期拘束を求める「勾留請求」をさせないこと、仮に勾留請求されても、裁判所に「勾留請求を却下」してもらうことを最大の目標として働きかけ、意見書を提出することになります。
意見書作成の材料として、被害者との示談交渉、本人に代わっての環境調整、再犯防止の誓約書の作成などを行うことになります。
② 勾留決定から検察官の処分決定まで(最大20日間)
- 結局、勾留決定されてしまいました。勾留は何日間続くのでしょうか。
- 勾留は原則として「10日間」と定められています。
- 早く身体拘束を開放する手段はありますか。
- 「勾留決定」そのものを取り消すよう求める「準抗告(じゅんこうこく)」という不服申し立てを行います。
裁判所に対して、拘束の必要性がないことを法的に主張し、勾留決定を取り消すよう求めます。主張が認められれば、釈放されます。 - この準抗告が認められるためには、何が重要ですか。
- 実務上、被害者との示談の成立が極めて重要な要素となります。
示談が成立した事実は、罪証隠滅や逃亡のおそれがないことを証明する最良の証拠の一つと言えます。 - 10日が過ぎても釈放されず「勾留延長」が決まった場合はどうなりますか。
- 捜査が終わらないとしてさらに最大10日間の延長が決定された場合、その延長決定に対しても、再度「準抗告」を行うことができます。
- 延長に対する準抗告においても、示談は重要ですか。
- はい。勾留決定時と同様、この延長に対する準抗告においても、示談の成立は重要な判断要素となります。
- 延長に対する準抗告を行うことで、どのような結果が期待できますか。
- 延長請求が却下され、直ちに釈放となるのが最善の結果です。
もっとも、勾留請求が却下となる場合は、必ずしも多くはありません。
ただし、そこまでには至らずとも、裁判所の判断により延長期間が短縮されることがあります。例えば、勾留請求自体は却下しないが、5日間のみ延長を認めるといった場合もしばしばあります。
被疑者にとっての一日の重みは、社会にいる私たちとは異なっていますので、身体拘束の期間が短縮されることには大きな意味があります。 - もし勾留中や延長中の準抗告が認められず、釈放されなかった場合はどうなりますか。
- 勾留期間が満了するまでに示談や環境整備を行い、検察官が不起訴処分とするよう活動していくことになります。
「不起訴」とは、裁判を起こされないという意味であり、本人には前科がつきません。ですから、不起訴処分となるか起訴されるかは、本人にとって大変大きな違いがあります。 - 相手が大手コンビニやドラッグストアでも、示談はスムーズにできますか。
- 事案にもよりますが、大手企業は、示談に応じない方針としている場合も多く、決して容易ではありません。
最近経験した事案では、被害金額数百円の万引き事案で、50,000円であれば示談に応じると提案されたケースがありました(このように提案された場合に、示談を進めるかどうかは御相談の上決定することになります。)。
このように、示談が困難な場合も多いですが、別の形での反省の立証や、医師やカウンセラーへの通院などの環境作りを通じて、検察官が不起訴とするための判断材料を提供する粘り強い活動が大切です。 - 家族が「接見禁止」で会えない場合、どうすればよいですか。
- 勾留決定に伴い、裁判所から「接見禁止(面会や手紙のやりとり禁止)」が付されることがあります。弁護士は、裁判所に対して「接見禁止の一部解除申し立て」を行います。これにより、ご家族に限って面会や手紙が許可されるよう働きかけ、ご本人の孤立とご家族の不安を解消できるよう尽力します。
③ 起訴後(裁判を待つ段階)
- 起訴されてしまったら、もう外に出ることはできないのでしょうか。
- 事案によりますが、起訴後には「保釈(ほしゃく)」を請求して、身体拘束を解く方法があります。
- 保釈金はいくら必要ですか。
- 保釈金は、1,500,000円から3,000,000円の範囲に収まる場合が多いです。
保釈金は、原則として裁判が終われば全額返還されます。 - 高額な保釈金をすぐに用意できない場合はどうすればよいですか。
- 日本保釈支援協会の立替制度を利用できます。
例えば200万円を2ヶ月借りる場合、立替手数料は55,000円、手数料が5,500円です(2026年5月末現在)。この制度を使えば、保釈金全額の準備が難しい方でも、釈放を目指すことができます。 - 保釈金を払わずに外に出る方法はありますか。
- 保釈金を払わない「勾留取消」を請求する方法があります。
実務上、保釈に比べて認められるハードルは高いですが、保釈金の工面や支援協会に払う費用が支払えないような場合には、検討してみる価値があります。
3高度な弁護戦略
※2025年6月施行の改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑は、受刑者の特性に応じた作業や指導を柔軟に行える「拘禁刑(こうきんけい)」に一本化されました。
刑の一部執行猶予(刑法27条の2)
- 刑の一部執行猶予とは、具体的にどのような制度ですか。
- 刑法第27条の2等に基づく制度で、たとえば「拘禁刑2年、うち6ヶ月を2年間の執行猶予とする」といった判決です。
薬物事件などで、1年6ヶ月は刑事施設でしっかり改善指導を受け、残りの6ヶ月分は刑務所の外に出て医師の指導や保護観察を受けながら、社会生活に段階的に慣れていくイメージです。
再犯防止に一定の効果があるとされています。
実刑を免れない場合、依頼者やご家族と相談の上、刑の一部執行猶予の獲得を目指すのも一つの選択肢です。
再度の執行猶予(刑法25条2項)
- 執行猶予中の再犯でも、再度、執行猶予がつくことはありますか。
- 刑法第25条第2項の規定により、「1年以下の拘禁刑の判決」かつ「特に酌むべき事情(情状)」がある場合に限り可能です。
専門医での受診報告や、被害者から減刑嘆願を得られた場合など、客観的な証拠を揃えて「文字通り今回に限り刑事施設に入れない」という異例の判決を求めていきます。
4判決への不服(控訴)
- 第一審の判決が重すぎた場合、控訴して最初から裁判をやり直すことはできますか。
- 判決の翌日から「14日以内」であれば、高等裁判所へ「控訴(こうそ)」が可能です。
ただし、控訴審は「裁判を最初からやり直す場」ではなく、「一審の判断が正しかったかを審査する場」です。単に納得がいかないと訴えるだけでは、結果は容易には覆らないことに注意が必要です。 - では、控訴審で結果を覆す(減刑などを勝ち取る)ためにはどうすればよいですか。
- 第一審の判決文を緻密に分析して論理的な誤りを指摘するとともに、「新たな有利な事情(新証拠)」を提出することが不可欠です。
- 控訴審で新たな証拠を提出することに制限はありますか。
- はい。刑事訴訟法(第382条の2など)の規定により、控訴審で新たな証拠を提出するには、「やむを得ない事由によって第一審の判決前に提出できなかった証拠」や「第一審判決の後に生じた事実(示談の成立など)」でなければならないと厳しく制限されています。
- そちらの事務所では控訴審に向けてどのような対応をしてくれますか。
- 一審後に新たに成立させた「示談」や、「医師の指導による更生環境の構築」などを上記の規定に基づく強力な新証拠として提出し、高等裁判所の裁判官を納得させ、より軽い刑罰や執行猶予の獲得を目指すことになります。
5身体拘束されていない事件(在宅事件)の手続きの流れ
- 逮捕されなかったのですが、それでも弁護士に相談したほうがよいですか。
- 逮捕されなかったことと、無罪放免とは異なります。
逮捕されなくても、裁判を起こされ(起訴)、有罪となれば前科がついてしまいます。
逮捕されていない場合でも、不起訴を目指すべきことは、逮捕されている場合と変わりません。
少なくとも、弁護士に相談する価値はあると思います。 - 在宅事件において、捜査段階で気をつけるべきリスクは何ですか。
- 最大の注意点は、「捜査段階で国選弁護人がつかない」という点です。検察官が起訴か不起訴かを決める最も重要な捜査期間中、弁護士の助けがないまま独りきりで取り調べに応じることになります。そのため、適切なアドバイスがないまま不利な供述をしてしまうリスクがあります。
- 在宅事件において、弁護人が果たす役割は何ですか。
- 身体拘束されていないからこそ、被害者の方との示談交渉、自身の問題に対する通院やカウンセリング、家族との生活環境の立て直しなどを、時間的・場所的誓約を受けずに行うことができます。
弁護人は、これらの活動を助言、支援し、検察官が不起訴とする材料を取り揃えて、最終的には不起訴処分となるよう活動することになります。








