1婚姻費用(別居中の生活費)
- 離婚に向けた別居を考えていますが、別居中の生活費を相手に請求できますか。
- はい、請求できます。
夫婦には互いの生活を支え合う義務があるため、別居中であっても、生活費(婚姻費用)を請求する権利があります。
離婚成立までの経済的な生活基盤となりますので、別居を検討する段階で事前に適正な金額を把握しておくことをお勧めします。 - 婚姻費用は、別居を始めた日に遡って請求することはできますか。
- 原則として、過去の分に遡って請求することは難しいです。
実務上は、「相手に明確に請求した時点(または調停を申し立てた時点)」からしか支払いが認められないケースがほとんどです。
生活費を受領していない場合は、お早めに弁護士にご相談いただき、請求手続きを行うことをお勧めします。 - 相手が婚姻費用の支払いに応じてくれません。強制的に回収できますか。
- 相手が話合いに応じない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。改正された民事執行法(第205条、第206条)により、裁判所を通じて相手の預金口座を銀行に照会したり、市役所や年金事務所から勤務先を特定したりする制度が使いやすくなりました。これにより、勤務先が分かれば、相手の給与を差し押さえるなどして回収できる可能性が高まりました。
2養育費
- 養育費の金額はどのように決まるのでしょうか。
- 基本的には、お互いの収入と子どもの人数・年齢をもとに、裁判所の「算定表」を基準にします。私立学校の学費や特別な医療費などがある場合は、これらを考慮して話合いをすることもありますが、私立学校の入学金等を請求するには、事前に相手方の了承を得ているかどうかが重要です。
- 養育費の金額について、年収に応じた具体例を教えてください。
- 給与収入の場合の具体例として、次のようなケースがあります。
例①(14歳以下の子1人):支払う側(夫)年収500万円、受け取る側(妻)年収200万円の場合 = 月額4万~6万円程度
例②(15歳以上と14歳以下の計2人):支払う側(夫)年収700万円、受け取る側(妻)年収200万円の場合 = 月額10万~12万円程度 - 公正証書がない場合、相手が養育費を支払わなくなったら給料の差押えはできませんか。
- 令和8年(2026年)4月の法改正により、夫婦間で交わした合意書等があれば、裁判所の手続きを経て給料などを差し押さえられる「一般先取特権(さきどりとっけん)」の制度が導入されました(改正民法第306条第5号、第308条の2)。ただし、この特権で優先的に差押えができる金額は、子ども1人あたり月額8万円が上限となります。
- 令和8年(2026年)4月より前に作成した合意書でも、この「先取特権」を使って差押えができますか。
- はい、過去に作成した合意書でも利用できます。ただし、先取特権での差押え対象は「令和8年4月1日以降に支払期日が到来した養育費」のみです。それより前に未払いになっていた過去の養育費の回収には、別途「債務名義(調停調書や公正証書など)」が必要となります。
- 離婚時に養育費の取り決めを一切していなかった場合でも、請求や差押えはできますか。
- 令和8年4月の法改正(改正民法第766条の3)により、取り決めがなくても「法定養育費」を請求できるようになりました。法務省令により、金額は子ども1人あたり月額2万円と定められています。相手が支払わない場合は、合意書がなくても先取特権を使って相手の給与を差し押さえることが可能です。ただし、これは暫定的な最低限の額ですので、適正な額を確保するための調停などを行う必要があります。
3財産分与
- 離婚する際、どのような財産が分与の対象になりますか。
- 結婚生活中に夫婦が協力して築いた預貯金、有価証券(株など)、保険、不動産などが「夫婦共有財産」として財産分与の対象になります。
名義が夫か妻かに関わらず、結婚後に増えた財産は原則として2分の1ずつ分けるのが実務上の基本です。 - 結婚前から貯めていた自分の預金や、親から相続した財産も半分に分けなければなりませんか。
- いいえ、分ける必要はありません。
結婚前から持っていた財産や、親からの相続・贈与で得た財産は「特有財産(とくゆうざいさん)」と呼ばれ、財産分与の対象外です。ただし、結婚後、生活費口座として利用するなど、婚姻前の金額が分からなくなった場合には、特有財産の金額の証明が難しくなります。 - 自宅の査定額が、住宅ローンの残高を上回っている(アンダーローン)場合、どのように分与しますか。
- 自宅に「プラスの価値」があるため、財産分与の対象財産となります。
例えば、実勢価格が30,000,000円、ローン残高が20,000,000円の場合、家を売却して500万円ずつ分けるか、一方が住み続ける代わりに相手に500万円の代償金を支払うといった方法で解決することになります。 - 逆に、住宅ローンの残高が自宅の査定額を上回っている場合は(オーバーローン)、どうなりますか。
- この場合、不動産や負債は、原則として財産分与の対象外となります。
注意が必要なのは「相手がローンを払い、自分と子が住み続ける」と約束する場合です。
相手の支払いが滞れば突然住まいを失うリスクが高く、あまりお勧めできません。
将来の生活破綻のリスクをなくすために、ローンを自分名義で借り換えたり、最悪の場合「退去・売却」を選択することが、長期的な自立のための賢明な判断となる場合もあります。 - 離婚した後に財産分与を請求することはできますか。
- はい、離婚後でも財産分与を請求することは可能です。
ただし、時間が経つほど、財産を隠されたり、費消されたりするリスクがあるため、早期に手続をとることをお勧めします。 - 離婚後の財産分与の請求には期限(時効)はありますか。
- 以前は離婚成立から2年という期限でしたが、法改正により「5年」に延長されました(改正民法第768条第2項)。
4補助金・手当等(全国および静岡市の制度)
- 全国共通で受け取れる「児童手当」に所得制限はありますか。
- 2024年の制度拡充により、所得制限は撤廃されました。高校生年代までが対象となります。
- 静岡市で「児童扶養手当」の支給金額はいくらもらえますか。
- 所得に応じて金額が異なります。子ども1人の場合、全部支給で月額約4.8万円、一部支給で月額約1.1万~4.8万円が目安となりますが、受給資格者等の所得が所得制限額以上の場合は、手当の一部または全部が支給停止となります。
- 児童扶養手当を多くもらうために、あえて養育費の金額を少なく設定した方が得でしょうか。
- そのような調整は、あまりお勧めいたしません。
たしかに、児童扶養手当の金額を定めるための所得額の計算には、前年受領した養育費の金額が反映され、養育費が多いと手当が減る場合があります。
しかし、公的な手当は将来的に打ち切られたり減額されたりするリスクが常にあります。一方、養育費にも不払いのリスクはあります。
目先の手当額を優先して養育費を低く抑えることは、結果的にトータルの受取額を減らす可能性もあります。
あくまでケース・バイ・ケースですので、慎重に判断する必要があります。








