経営者との対話集

1契約した相手方とのトラブル等

契約した相手が、代金を支払ってくれません。
経営者として、ストレスを感じる場面です。
代理人(弁護士)名義の書面で請求することで、相手方が支払いに応じる場合もあります(内容証明郵便の発出)。この場合は、費用も比較的低額で済みます。
書面発出だけでは効果がない場合には、法的手続によることになります。手続には、支払督促、民事調停、訴訟などいくつか種類がありますが、取引先の規模や属性、資産の有無などによってどのような手順や選択が最適かは異なります。一度、弁護士にご相談されることをお勧めします。
ようやく勝訴判決を得たのですが、相手が支払ってくれません。早く債権を回収したいです。
せっかく手続をとったのに、とさらにストレスがたまる状況です。
たしかに、債権回収は容易ではありません。
最も効果的なのは、相手方の口座を差し押さえることですが、この口座を発見すること自体、容易ではありません。
ですが、令和2年施行の改正民事執行法により、勝訴判決等を得ている場合には、以前よりも相手方の口座情報を取得しやすくなりました。
また、相手方が市場性のある不動産や自動車を保有している場合も、回収の可能性は高まります。
さらに、相手方が財産を隠匿しようとしていたり、一歩進んで譲渡してしまったような場合には、仮処分や詐害行為取消請求訴訟の提起も考えられます。
事態がここまで来ると、弁護士へ依頼するのが適切な状況だと思われます。
新たに取引先となる相手方から契約書のドラフトを提示されたのですが、どこが自分に不利なのか判断がつかず、困っています。
契約書の中身は、普段目にしない言葉が並んでおり、とても分かりにくいものですよね。
この点、契約書のチェックには、一定の法的知識が必要不可欠です。
記載内容のチェックはもちろんのこと、本来記載されていなければならない条項が抜け落ちている場合もあります。
さらに、契約書チェックで重要なのは、業界の商慣習や当事者間の力関係などを把握した上でこれを行うことです。
一般に、契約は、これを締結した後に修正することは困難です。署名・押印する前に納得のゆく相談をなさることをお勧めします。
また、契約書のチェックに限りませんが、経営者が時間と労力を割くべきなのは、あくまで本業に対してです。
不慣れなことに時間や労力を割くより、「餅は餅屋」の考えが適当であると考えます。
新たな取引先と取引したいのですが、どのような点に注意したらトラブルを回避できるでしょうか。
経営者として判断に迷うところかもしれません。
言わずもがなですが、相手方の会社や個人が信用に値するかどうかが最も大切です(この点は、弁護士が判断するところではありません。)。
その上で、支払期限や方法、不履行の際における契約解除の方法等を、口約束ではなく、契約書として書面化しておくことはとても大切です。
簡易な内容であれば、ご自身で対応してもよいかもしれませんが、少々複雑であれば、弁護士へご相談されることをお勧めします。
今まで取引先と契約書を取り交わしてきませんでした。新たに作成しようと思うのですが、信頼関係もあるので、簡単なものでよいでしょうか。
なかなか、悩ましい問題ですよね。何が正しいのかを一概に言うことはできません。
私は、契約書とは、当事者双方が相手方を尊重している証と捉えるのがよい、と考えています。その証が簡素なものでよいのか、精緻なものがよいのか、それは経営者の価値観や人生観に根差すものだと思います。
個人的には、真の信頼とは、訣別するときでさえ、相手の経営を尊重することであると考えます。

2組織内のトラブル等

従業員にミスやトラブルが多く、退職してほしいと思っています。解雇しても会社に問題はないでしょうか。
日々経営に頭を悩ませている経営者のお気持ちからすれば、お考えも理解できないではありません。
とはいえ、解雇には、懲戒解雇、普通解雇の2種類がありますが、いずれも簡単に有効になるものではありません。ミスやトラブルの内容にもよりますが、解雇が有効と判断されるほどのミスやトラブルは、相当大きなものである必要があります。
むやみに解雇することは、法的紛争に発展する危険が高く、却って組織にとってマイナスになることも少なくありません。
解雇権を濫用すれば違法と判断されることもありますし、どうしても解雇しなければならないということであれば、法的紛争に発展するリスクがあることを十分に認識した上で行う必要があります。この点を認識しておかないと、かえって経営上のリスク要因となります。
解雇すべきでないとすれば、どうしたら損失を回避できるのでしょうか。
退職を勧める退職勧奨の手段があります。
もっとも、この退職勧奨も、回数、面談時間、説明内容といった事情次第では違法となることがあります。
私は、どうしても退職勧奨しなければならないのであれば、組織の事情を正直に説明し、真摯にお願いするという姿勢を示すことが肝要であると考えています。
これまでの関係性にもよりますが、場合によっては、相手方が退職することを承諾してくれるかもしれません。
念のためではありますが、雇用主であるという立場を固辞して退職を迫ることは、従業員を頑なにするだけであり、百害あって一利なし、と考えます。
解雇したところ、元従業員から提訴されました。どのように対応したら損失を最小化できるでしょうか。
経営者として、経済的にも精神的にもつらい局面です。
私は、極力事実を示して反論すること、人格攻撃と受け取られる可能性がある表現は避けることが肝要と考えます。
すでに起きてしまった訴訟の戦線をむやみに拡大させないことは、事案の早期解決の観点からも、相手方の心情を刺激しないという観点からも重要です。
また、このような従業員からの提訴は、組織のひずみが表面化した場面であるとの発想の転換も大切ではないか、とも考えます。そのような視点で事案を見つめ直したとき、ただつらいだけであった訴訟が、別の顔を見せてくれるかもしれません。
さきほどもお話ししましたが、経営者が本来時間と労力を注ぐべき対象は、あくまで本業です。起こされた訴訟は、過去の事象に対するものです。過去にではなく、未来へと目を向けることは、ご自身のためのみならず、他の従業員、ひいては会社のためにも大切なことであると思います。
従業員が重大な規律違反を犯したのですが、長年当社に貢献してくれた人物でもあり処分に迷っています。
経営者は孤独ですよね。すべての責めを一身に負うべき存在です。
過去の事例や裁判例に照らし、相応の懲戒処分を下すことは、経営者自身、他の従業員のためでもあり、ひいては、規律違反をした人物が自立するためにも必要である、と私は考えます。
過去の裁判例などが気になる方は、一度弁護士にご相談ください。
業績不振で、従業員の給与を下げざるを得ないのですが、切り下げても問題はありませんか。
経営者として、とてもつらい判断を迫られている場面ですが、一方的に給与を下げることはできません。
給与を下げるには、従業員に個別の同意を得るか、適正な手続を経た上で給与規程を変更する必要があります。
いずれもハードルが高いものですから、給与の切下げは、経費節減の中でも最後の手段です。
手続を誤ると、違法な賃金切下げとなるおそれがありますので、事前に弁護士へお尋ねになることをお勧めします。
最近、従業員の仕事ぶりが芳しくありません。何となく、うつのような印象を受けるのですが、放置しても会社に問題はないでしょうか。
昨今、メンタルヘルスを害する方が増加している印象です。
雇用主としては、まずは、きちんと面談し、必要に応じて受診を勧め、場合によっては診断書の提出を求めます。
業務軽減や休業が必要であるのに、適切な措置を講じない場合、労働災害と認定されたり、安全配慮義務違反による損害賠償を請求されるリスクもあります。
何より、従業員が長期間の休職等に至ること自体、企業にとっては大きなマイナスですし、人材不足が叫ばれている昨今であれば、なおさらです。
雇用主は、従業員の心身の健康に十分に配慮する必要がありますし、近時その重要性はますます高まっているといえるでしょう。

3その他

会社の取締役間で路線対立が生じてしまいました。どうしたら、会社の損失を最小化できるでしょうか。
経営者として大きなストレスがかかっている状況であるとお察しします。
株式会社であれば、基本的に持ち株比率によって経営方針が決定されます。
ですから、持ち株比率が優っている方が、会社経営を主導するというのが基本原則です。
もっとも、少数株主であっても、多数派株主を背景とする取締役が違法行為等を行っている場合には、その解任を求めることができる場合もあります。
また、その取締役が違法行為等を行うことを企図しており、会社に取り返しのつかない損害が発生するおそれがある場合などには、取締役職務執行停止の仮処分を提起することもできます。
とはいえ、持株比率が拮抗していたり、少数株主であれば、解決は、相当に困難であることを覚悟する必要があると思います。
会社内部の紛争は、持ち株比率を基本としつつも、高度な経営判断が要求されるシビアな場面です。紛争の深刻化は、企業のイメージや信用を著しく棄損しますし、そのような事例は枚挙に暇がありません。相互の自立のため、分社化するのが得策という場面もあるでしょう。
いずれにせよ、法律と感情が複雑に絡み合う場面ですので、お早目に弁護士へご相談されることをお勧めいたします。
最近、経営が芳しくありません。何が最善であるのか判断がつきません。
大変難しい問題です。到底、外部の一弁護士が簡単にお答えできるものではありません。
負債の規模、会社が保有する不動産や知的財産等の資産、スポンサーの有無などにより、何が最善策であるかは、当然異なります。
ただし、あえて申し上げれば、手元資金が尽きるまで経営してしまうと、本当に行き詰まってしまうということです。
そうなれば、ご自身やご家族が路頭に迷うことになりますし、最悪夜逃げなどということにもなりかねません。
また、取引先にしても、法的手続をとってもらえれば経理上損金処理ができるのに、手続を執ってもらえないことで未収金として資産計上しなければならないといった不都合もあります。
大切なことは、社会情勢と自らの財務状況を冷静に分析して、最悪、家族の数か月分の生活費と破産等の法的手続を執るための費用を手元に残しておくことです。
ご不安のある方は、私でなくても結構です。一度、弁護士に御相談ください。
全くの私見ですが、一つの目安として、ご家族の半年分の生活費プラス1,000,000円程度があれば、一家離散のような最悪の事態は避けることができるように思います(事案によって異なることを念のため申し添えます。)。
やむを得ず法律的にグレーゾーンに足を踏み入れねばならない状況です。どうしたら、最も安全でしょうか。
企業経営における究極的選択を迫られている場面であるとお察しします。私ができるアドバイスも限られています。
無論、明確な解答を提示することはできません。
私は、2つの視点が重要であると考えます。
1つは、法律は物事を「縛る」側面のみならず、「守る」側面もあるということ。過去の裁判例に照らして、企図している行為が違法とまではいえないとの裁判例が存在するかどうかは、十分検討に値します。
もうひとつ意識すべきことは、時間軸です。
今踏み入れようとする領域が、数年後の自分や自社にとって、どのようなものであるのか。現在の危難を免れるだけの意味しかないものであるとしたら、果たしてそこに足を踏み入れるべきなのか。時間軸を意識することは、極めて大切だと思います。
このようなことを聞いてもよいのか、とお考えになるかもしれません。けれども、遠慮は全くいりません。ある領域に足を踏み入れてからご相談いただくより、その前にご相談いただいた方がよほどよいということは、往々にしてあります。
決してお一人で悩まないでください。

以上、会社や個人事業主の方から、比較的よく相談、受任する事案を基に作成しましたが、ほかにも様々な相談やお悩みがあると思います。
人に生老病死があるように、企業にもそれがあると思います。
経営者は、孤独です。ときに、非情な決断を一人迫られる場面もあるでしょう。

私は、単に企業を法律面からサポートするというだけでなく、孤独な経営者が、企業理念を具現化してゆく「参謀」の役割を担うことができればと考えますし、それが叶えば望外の喜びです。

また、弁護士への相談、書面作成や契約書チェック等が月に複数回ありそうな方や、気軽に電話で相談したいという方は顧問契約を結ぶ方法もあります(当事務所では、顧問契約をしていない方の無料相談や電話相談には対応しておりません。)。

顧問契約を締結していただいた場合には、一定回数までの法律相談及び書面作成は顧問料の範囲内で行います。また、法的手続を執る場合にも一定割合を減額しておりますし、比較的容易な問題であれば電話での相談にも対応しております。詳しくは、事務所までお問合せください。

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