1私は離婚ができるのでしょうか
性格の不一致
- よく「性格の不一致」と言いますが、何を意味するのでしょう。「性格の不一致」を理由に離婚できるのでしょうか。
- 「性格の不一致」は、しばしば耳にする言葉ですよね。
もっとも、改めて考えてみると、わかりにくい言葉です。夫婦であれ、他人ですから性格が完全に一致しているはずもありません。
夫婦間の「性格の不一致」は、価値観の相違や思いやりの欠如と言い換えることができるかもしれません。
もっとも、そのこと自体が直ちに法が定める離婚原因になるわけではありませんが、その程度が著しく、婚姻関係が客観的に破綻して修復不可能な状態に至っていると認められれば、民法770条1項4号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として、裁判上の離婚が認められる可能性があります。
裁判所は、単なる抽象的な不一致ではなく、具体的な言動の積み重ねや別居期間、修復努力の有無、離婚意思の強固さなどを総合的に判断して、婚姻破綻の有無を決定します。 - それでは、「性格の不一致」を理由に離婚が認められた裁判例を教えて下さい。
- ①生活観・人生観の隔絶(性格の不一致)が最大の原因とされた事例
学究的な夫と平凡な家庭生活を望む妻との間で、生活観・人生観に大きな隔絶があり、妻がヒステリー性発作を起こすなどの緊張状態にあったケースで、性格の不一致を最大の破綻原因として離婚を認めました(東京高判昭54年6月21日)。
②精神的不協和と愛情喪失が性格不適合に由来するとされた事例
活発な妻と真面目だが柔軟性に欠ける夫との間で、夫婦間の精神的不協和や妻の夫に対する絶望感・愛情喪失が生じており、これが性格の不適合に由来するとして離婚を認めました(横浜地判昭59年7月30日)。
③日常的な不満の積み重ねと強固な離婚意思・別居期間が考慮された事例
子を持つ夫婦間で日常的に生じうる不満(無配慮な言動等)であっても、見解の相違を克服できず妻の離婚意思が強固で翻意の可能性がなく、別居が3年5か月以上に及んでいる場合に、婚姻関係は修復不能として離婚を認めました(東京高判平29年6月28日)。
別居期間も3年以上に及んでいることに着目する必要があります。
④性格相違に伴う暴力や冷遇が伴う事例
性格の相違から夫がしばしば暴力を振るい、双方が婚姻継続の意思を欠く場合に離婚を認めた事例(東京地判昭31年6月7日)や、破綻の一因が性格不一致にあるが主たる原因は夫の妻に対する冷遇等にあるとして離婚を認めた事例(水戸地判昭54年4月24日)があります。
⑤義親との不和と配偶者の態度が原因となった事例
妻の両親からの蔑視や冷遇に対し、妻が両親に密着・隷従する態度をとったことで、夫が疎外感を深め、婚姻継続の意思を喪失して別居に至ったケースで、回復が困難として離婚を認めました(山形地判昭45年11月10日)。
⑥親族間の軋轢が夫婦の破局に導いた事例
妻の母と夫との間の不和・軋轢がきっかけで夫婦関係が深刻化し、破綻の責任が双方にある(夫に主たる責任があるとはいえない)として離婚を認めた事例があります(名古屋高判昭58年12月27日)。 - それでは、逆に、離婚が否定された裁判例があれば教えてください。
- ①修復の可能性や努力の余地がある場合
夫婦の性格に離反要因があり維持が困難であっても、双方の努力によって将来再び幸福な生活を築くことが不可能とは考えられない場合は、離婚原因(5号)に該当しないとされました(広島地判昭43年11月27日)。
②婚姻関係維持の努力を怠っている場合
性格の違いで亀裂が生じ別居が3年に及んだ事例でも、互いの努力により克服可能であるとして離婚請求が棄却された判例があります(札幌地判昭50年3月27日)。
もっとも、現在の実務の傾向からして、3年の別居期間がある②の事例は、現在であれば離婚が認められる可能性があります。 - 結局のところ、「性格の不一致」で離婚はできるのですか。
- 裁判例だけでは、分かりづらいですよね。
結局のところ、裁判実務において「性格の不一致」による離婚が認められるか否かは、単なる性格の違いという主観的な事情ではなく、それによって生じた客観的な言動の積み重ね、別居の有無や期間、双方の修復努力、そして最終的に婚姻関係が修復不能なまでに「破綻」しているかどうかという総合的な判断によって決められます。性格の不一致に言及した裁判例は多く見られますが、いずれも具体的な事実関係に即して、客観的に婚姻関係の継続を期待し難い程度の事由があるかどうかが厳格に検討されています。
モラルハラスメント
- 相手から長年モラハラを受けているのですが、離婚できるでしょうか。
- 長年のモラハラは、おつらかったことでしょう。
モラルハラスメント(以下「モラハラ」)は、その態様、頻度、継続性によって夫婦関係が客観的に破綻し、回復の見込みがないと判断される場合に、民法上の離婚原因(「婚姻を継続し難い重大な事由」民法770条1項4号)として離婚が認められます。
具体的には、人格を否定するような暴言、重大な侮辱、無視、交友関係の監視、経済的虐待などが該当します。
判断基準としては、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)1条1項が定める「身体に対する暴力、又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」に相当する程度の重大な人権侵害があるかが参照される傾向にあります。
具体的には以下のような行為です。
①暴力に準ずる言動
人格を否定する暴言、無視、交友関係の細かな監視、性的暴力(避妊への非協力等)。
②重大な侮辱
配偶者を「無能」「異常者」と呼ぶ、汚物扱いする、関係先に誹謗中傷の書面を送るなどの、名誉や感情を著しく害する言動。
③経済的虐待
十分な生活費を渡さないなど。
これらの事情を総合して、モラハラ(精神的虐待)を認定してゆくことになります。 - モラハラを理由とする離婚は認められにくいと聞いたことがあるのですが、どのような裁判例があるのか教えて下さい。
- たしかに、モラハラの中身は必ずしも明確ではありませんよね。
裁判所が離婚を認めるにあたっては、言動の内容、回数、期間、原因となった事実など諸般の事情を考慮し、客観的に夫婦関係が破綻し、やり直しができない状態に至ったかが判断されます。
①長期にわたる侮辱的言動
35年の婚姻生活で「結婚して損をした」「ばか」といった侮辱が激化し、連日のように続いていた事案(横浜地判昭59年2月24日)。
②精神的虐待と虚偽報告
夫の上司に対し、捏造した事実を報告するなど、執拗な精神的虐待があった事案(東京地判昭31年6月21日)。
③配慮を欠いた行為
夫の先妻の位牌を勝手に他所に送りつけたり、思い出のアルバムを焼却したりする行為(大阪高判平21年5月26日)。
④役割分担の相違と無配慮
妊娠中の冷淡な対応や育児への非協力に加え、別居期間が3年5か月に及び修復不能と判断された事例(東京高判平29年6月28日)。
⑤高圧的な態度の推認
身体的暴力の証拠が不十分でも、配偶者の親族への反発や高圧的な態度から暴言が推認された事例(東京家判平20年3月28日)。
いかがでしょうか。私見ですが、裁判でモラハラによる離婚が認められたケースは、いずれもかなりのエピソードがあるように感じます。
暴言が続いた期間やその内容、相手方の心情や名誉を著しく傷つける言動の有無が重視される傾向にあり、また、モラハラ単独ではなく、別居期間や他の考慮要素と総合して、離婚原因の有無が判断される場合もあるようです。 - 「モラハラ」は、立証が難しいと聞いたことがあるのですが、どうでしょうか。
- たしかに、モラハラの立証は簡単ではありません。
モラハラは「精神的な嫌がらせ」という性質上、相手方が否認した場合に立証が困難になる傾向があります。相手方が素直に認めることも、あまり期待できません。
特に、加害配偶者が「外面(そとづら)が良い」場合や、社会的地位が高い場合、裁判所での紳士的な振る舞いにより、被害の事実を疑われるリスクがあります。そのため、以下の証拠収集が重要です。
①客観的な直接証拠
ボイスレコーダーによる録音、メール、LINEの履歴、受傷部位や破壊された物品の画像データ、日記やメモ(日時、場所、経緯を逐一記載したもの)などがあると有力な証拠となり得ます。
②心身への影響の証明
精神的ダメージを裏付ける心療内科の診断書(うつ症状、適応障害、PTSD等)や、公的機関(警察、DVセンター等)への相談記録も重要です。積極的に取り寄せておきたいところです。
③紛争過程における言動
離婚協議や調停・訴訟において、相手方が提出した準備書面や事情説明書には、そのモラハラ的な気質が表れることがあり、裁判官の心証形成に影響を与える重要な要素となります。
特に、相手方に代理人が就いていない場合、弁護士によるスクリーニング機能が働かないため、そのモラハラ的言動が、直接裁判所に認知されることになります。
これらの証拠を丹念に積み重ねて、立証してゆくことになります。
浪費
- 相手の浪費がひどく、ほとほと疲れてしまいました。離婚したいのですが、できるでしょうか。
- 相手の浪費というのは、おつらいですね。
「浪費」には、様々な程度があるので、一概に言うことはできません。
例えば、長年にわたり全く生活費を入れてくれないような場合であれば、相手の言動は、もはや「浪費」の域を越え、「悪意の遺棄」として、それ自体が離婚原因になります(民法770条1項2号)。
他方、あなたの目から見て、相手の言動が「浪費」に見えても、それで借金を余儀なくされているわけでもなく、貯蓄ができないという範囲であれば、おそらくそれだけでは離婚原因にはならないと思います。
結局、お互いの収入、家族構成、生活水準、年齢などの諸事情から判断してゆくことになりますが、一般的には、「浪費」のみで離婚原因に当たると主張してゆくのは困難な場合が多いと思われます。
浪費以外の要素を主張することも検討しましょう。
性生活の不一致
- 少し話しづらいのですが、相手と性生活に関する考え方に不一致があり、つらい状況です。離婚することはできるでしょうか。
- センシティブな問題ですよね。お話ししづらく、さぞお悩みのことでしょう。
弁護士に話す前に、まずは、本項目を読みください。
最初に、基本的な考え方についてお答えします。
「性生活の不一致」(性的不能、長期間の性交渉欠如、性交拒否、性的指向の相違など)は、民法770条1項4号に規定される「婚姻を継続し難い重大な事由」として、裁判上の離婚原因になり得ます。
裁判所は、婚姻における性関係の重要性を認めつつ、単に事由が存在するだけでなく、それが継続的であり、夫婦関係が客観的に破綻して回復の見込みがない状態に至っているかを個別具体的な事情に基づき判断します。 - それでは、具体的な裁判例などについて教えてください。
- 以下のような裁判例があります。
もっとも、少し古い裁判例も多いので、そのあたりにはご留意ください。
①生殖能力の欠如と性交不能(最判昭37年2月6日)
夫が交際中に睾丸を切除していたが、医師の「夫婦生活に影響はない」との言葉を信じて結婚した妻が、約1年半の同居中に一度も性交渉ができなかった事案です。最高裁は、性生活が婚姻の基本となる重要事項であるとし、妻が離婚を決意したことは無理からぬとして離婚を認めました。
②婚姻前からの性的不能の秘匿(京都地判昭62年5月12日)
夫に性的衝動が生じず、新婚旅行中や約3年半の同居中も性交渉がなかった事案です。裁判所は、病気や老齢などの特段の事情がない限り、長年の性交渉欠如は原則として離婚原因に該当すると判断しました。また、婚姻前に性的不能を告知しなかった夫に対する慰謝料請求も認められています。
③一方的な性交拒否と自慰行為(福岡高判平5年3月18日)
夫が妻との性交渉を拒否する一方で、ポルノビデオを見て自慰行為に耽っていた事例において、婚姻を継続し難い重大な事由に該当すると判断されました。
④ポルノ雑誌への異常関心(浦和地判昭60年9月10日)
夫がポルノ雑誌に異常な関心を示し、妻との性交渉を拒否し続けている行為について、離婚原因としての重大な事由に該当すると認められました。
⑤夫の同性愛(名古屋地判昭47年2月29日)
結婚当初は性交渉があったものの、後に夫が他の男性と同性愛関係になり、妻との性交渉を拒むようになった事案です。裁判所は、性生活が婚姻の重大な要因であるとし、妻の受けた衝撃や回復の不可能性から、離婚を認めました。
もっとも、これは、やや古い裁判例です。
単に一方が同性愛者であることのみで直ちに離婚が認められるわけではなく、その相違によって婚姻関係の維持が具体的にどのように困難となっているかが判断のポイントとなるものと考えます。
2親権について
- 「親権」とは、何でしょうか。
- 「親権」とは何か、分かるような分からないようなつかみどころのない言葉です。
親権とは、未成年の子どもの利益のために、子どもの世話や教育(身上監護権)を行ったり、子どもの財産を管理し契約などを代理したりする(財産管理権)権利と義務の総称です(民法818条)。
親は、婚姻関係の有無にかかわらず、子どもの心身の健全な発達を図るために子どもを養育する責任を負っており、親権の行使にあたっては、子どもの人格を尊重し、その意見に耳を傾けるよう努めなければなりません。
「親権」は、「権」という言葉から、親の権利であるような印象を受けますが、権利と義務の両面がある点に注意が必要であると考えます。 - 今度、離婚することになりました。親権者は、どのようにきめたらよいのでしょうか。
- とても大切な問題ですね。
以下、親権者の決定方法について、説明します。
①協議による決定(話合い)
まずは、父母が話し合いにより、共同親権とするか単独親権とするかを合意します。
この話合いは子どもの利益のために真摯に行われる必要があります。
②裁判所による決定
父母の間で協議が調わない場合は、家庭裁判所が判断します。
裁判所は、父母と子どもの関係、父母それぞれの事情、その他一切の事情を考慮し、子どもの利益の観点から、「共同」か「単独」かを決定します。その際、裁判所は父母の意見を聴き、子どもの意思を把握するよう努めることとされています。
このように、まずは父母間で話し合い、それでも決まらない場合には、裁判所が決めるルールとなっています。 - 相手方から、DVを受けてきました。共同親権には抵抗があるのですが、相手方は共同親権をゆずりません。やはり共同親権になってしまうのでしょうか。
- とても心配ですよね。
裁判所が親権者を決める場合に、単独親権とすべき場合について説明します。
①父または母が子どもの心身に害悪を及ぼすおそれ(虐待)があると認められるとき
②父母の一方が他方から身体的暴力や心身に有害な影響を及ぼす言動(DV)を受けるおそれがあるとき
③父母間の対立が激しく、共同して親権を行うことが困難であると認められるとき
これらの場合、裁判所は、共同親権ではなく、単独親権とすべきものとされています。
ですから、相談者様の場合、長年DVを受け続けてきたことを立証してゆくことになります。この点の立証ができれば、裁判所は、相談者様の単独親権を認めるものと思われます。 - 離婚の際、共同親権とすることに合意しました。実際には、どのようにして親権を「共同」して行使するのでしょうか。
-
たしかに、親権の共同行使は、イメージがつかみづらいところがありますね。
共同親権となった場合、子どもの将来に関わる重要な事項(進路、転居、重大な医療行為など)は、父母が共同で決定する必要があります。ただし、全ての行為を共同で行う必要はなく、以下のような場合は単独で親権を行使できます。
①日常の行為
監護や教育に関する日常的な事項(日々の食事や生活習慣など)は、監護している親が単独で行うことができます。
②急迫の事情
子どもの利益のために緊急を要する場合。例えば、緊急の手術、入学手続きの期限が迫っている場合、虐待からの避難などが該当します。
なお、共同親権は必ずしも「共同監護(一緒に住むこと)」を意味するわけではありません。離婚後は通常、父母のどちらか一方が子どもと同居して日常生活を送ることになります。そのため、共同親権とすることを合意した場合であっても、離婚後の養育計画(居住形態、親子交流、養育費など)を事前に話し合っておくことが重要です。 - 共同親権は、いつから始まったのですか。また、過去に単独親権と決定したケースでも、共同親権に変更できるのでしょうか。
- 共同親権は、2026年4月1日から施行されています。ですから、この日以降に離婚する方は、単独親権、共同親権のいずれとするかを決める必要があります。
また、過去に単独親権と決めた場合であっても、2026年4月1日以降は、共同親権へ変更することができます。








