1事前準備
- 自分が亡くなったあとのことが何となく不安なのですが、何が不安なのか自分でもよく分かりません。このような状況でご相談に行ってもご迷惑でしょうか。
- 漠然とした悩みがある、そのようなことは、ままあることです。そのまま相談へお越しください。
具体的なご依頼の前に事情をお聞きすれば、不安の元がどこにあるのかを共有できると思いますので、そのようなご相談も有意義であると考えます。
遺産相続の問題は、どのような財産があるのか(遺産の範囲)、財産を受け継ぐべき人はだれか(推定相続人の確定)、遺言はあるか、推定相続人に妻子はあるか、病気や障がいを抱えてはいないか、相続人以外にも財産を受け継がせたい人がいるか(遺贈や寄与分の問題)など、様々な背景事情が絡んでいるものです。
あなたが抱えている不安の元がどこにあるのかをともに探ってゆくことで、これから何をしたらよいか、が見えてくると思います。
何らかの不安があるのであれば、ご予約の際に「何となく不安という程度なのですが、ご相談してもよいですか。」などとお伝えいただければ、こちらも、その前提で対応いたします。
2遺言関係
- 私が亡きあと、妻や子どもたちが財産のことで揉めそうな気がするのですが、解決策はありますか。
- それは心配ですよね。
完全に紛争を防止することはできないかもしれませんが、遺言を作成することをお勧めします。
もちろん、遺言さえ作成すればすべてが解決するわけではありません。
けれども、しっかりとした遺言があれば、基本的に財産は遺言の内容に沿って分けられます。内心不満があろうと、相続人がこれに抗うことは簡単ではありません。
また、遺言には、「付言」といって、自分がなぜこのような遺言を作成するに至ったのかという心情を記載することができます。
遺された方々への感謝やお願いごとを綴ることで、相続人のお気持ちも和らぐかもしれません。
争いごとを最小化するためにも、また、ご自身の自立した人生の締めくくりとしても、遺言の作成を検討してみてはいかがでしょうか。 - まだ体も元気ですし、判断力もしっかりしていますので、遺言の作成は、今すぐでなくてもよいでしょうか。
- 特段今すぐでなくてもかまいません。
そもそも、遺言は、作成してもしなくてもよいですし、いつ作成するかも自由です。
もっとも、私が気になるのは、あなたがなぜ今遺言の作成を考えたのかという理由です。気になったというのには、何らかの原因があるのではないか、と感じます。
また、一つ注意すべき点として、遺言は、年齢を重ねてからの作成であればあるほど、無効となるリスクが高くなるということです。
「遺言能力」といいますが、認知症などの理由で能力が衰えてからの作成であると、遺言能力が欠けているとして遺言が無効になることがあります。
私も、過去に相当数経験がありますが、遺言能力をめぐる問題は、調停ではなく裁判で取り扱われ、時間もかなりかかります。裁判で遺言が有効か無効かを確定した後に、初めて遺産分割の話へと進むことができるので、最終的解決まで相当な年月がかかります。
遺言は、いつでも内容を改めることができます。最後に作成した遺言だけが有効であり、それ以前のものはすべて無効になります。
作成を思い立ったのであれば、お早目の作成をお勧めします。 - 遺言には、自筆と公正証書の2種類があると聞きました。費用を節約したいので、自筆で書きたいと思っていますが、問題ありませんか。
- もちろん、自筆証書遺言でも問題ありません。
ただし、自筆証書遺言が有効であるためには、以下の要件を充たす必要があります。
①全文を自ら書くこと
②遺言を作成した日付を書くこと(西暦でも和暦でもかまいません)
③氏名を書くこと
④はんこを押すこと(実印でなくても結構です。以上民法968条1項)
なお、最近、遺産目録については、パソコンで作成した文書や全部事項証明書の添付でもよいとされました(968条2項)。
とはいえ、中身がわかりづらかったり、形式に不備があると、遺言として無効となるおそれがありますので、弁護士に内容を確認してもらうことをお勧めします。
また、そもそも、自筆証書遺言は、これを信頼できる人物に託しておかないと、発見されなかった場合、折角の遺言がまったく反映されないことにもなりかねません。
このような観点からも、私は、遺言作成は公正証書により、遺言執行者として弁護士を指定しておくことをお勧めしています。
ちなみに、公証人への費用の目安ですが、遺産が固定資産税評価で約1800万円の不動産のみであった案件の場合、約6万2000円でした(2025年11月)。
これを高いと考えるか、安心に対するコストと考えるかは人それぞれですが、相続人間の紛争の種を減らすという意味でも、公正証書によるのがお勧めです。 - せっかく遺言を作成しても、相続人に遺言の内容が伝わらなければ意味がないと思うのですが、どうすればよいのでしょうか。
- それは、ご指摘のとおりです。遺言を信頼できる人物に託すとよいでしょう。
託す人物は、相続人以外の人物が無難であると思います。
そして、相続人に対し、「●●さんに遺言を託してあるから。」とだけお伝えしておけば、遺言が無駄になる可能性は低いと思います。
このとき、相続人一人だけに伝えると、その人物が他の相続人に遺言の存在を知らせない可能性もあるので、遺言の存在は相続人全員に伝えるのがよいと思います。
また、遺言を託す適当な人物が見当たらない場合には、弁護士に託す方法もあります。
なお、自筆証書遺言を託された方は、家庭裁判所に対して検認の手続を申し立てる必要がありますので、ご注意ください。
ちなみに、遺言公正証書が作成されている場合、相続人であれば、公証役場に問い合わせることによって遺言の有無を確認することができますので、遺言公正証書を作成した旨を相続人に伝えておけば遺言が発見されないというリスクは低いと思われます。
3遺産分割関係
- 父が亡くなりました。遺言は見当たりません。できるかぎり出費を少なくしつつ遺産分割したいのですが、どうしたらよいでしょうか。
- 私が言うのもおかしな話ですが、弁護士に依頼すれば当然費用が掛かります。
ですから、弁護士に依頼せずに当事者のみで解決ができるのであれば、それに越したことはありません。
私が考える最も大切なポイントは、ずばり、遺産内容を把握している方であれば、遺産内容を決して隠さず、他の相続人にすべて開示することです。このとき、残高照会や目録だけでなく、できれば通帳の写しまで開示できれば透明性が高まります。遺産を隠したりしますと、他の相続人は必ず不審を抱き、当事者のみで解決することは困難になります。
また、相続人全員に対して言えることですが、お互いに譲歩することはとても大切です。弁護士費用や要すべき時間を考えたとき、多少不満が残ったとしても、弁護士に依頼しない方が経済的には得であるという場合は、少なくありません。
どちらが得か損かは、弁護士に依頼する前に十分に吟味してください。ある程度資料が出揃っている状況であれば、アドバイスができると思いますので、お問合せください。 - 結局、当事者間だけでは、話合いがまとまりませんでした。弁護士を依頼したいのですが、依頼すると、かえって他の相続人の感情を害するのではないかと心配です。
- 確かに、弁護士を依頼することに一定の拒否反応を示す方はおられます。
もっとも、当事者間のみで解決に至らなかった場合、放置しておいてもおそらく事案が解決することはありません。
また、当事者だけで話し合っていると、ときに感情的になったりすることもあります。
弁護士が代理人となれば、法的根拠のない主張をすることは、まずありません。
また、調停を提起すれば、行司役である調停委員会が、双方の意見を聴きながら話合いを進めるので、一方的に話が進むこともありません。
当事者で話ができなかった場合には、弁護士に依頼して、調停を起こしてもらうことをお勧めします。 - やむなく弁護士に依頼することにしたいのですが、費用が心配です。私が取得する遺産以上の報酬を支払うことにでもなれば、弁護士を依頼する意味がありません。
- 確かに、弁護士報酬がいくらになるのかは、心配ですよね。
たまに聞かれるのですが、弁護士は、依頼者が取得する財産価値以上の報酬を請求することはありませんので、その点はひとまずご安心ください。
さて、当事務所の弁護士費用の目安ですが、遺産の額(不動産の数)や相続人の数などによっても異なりますが、概算をお知らせします。
①着手金 概算300,000円から500,000円(消費税別)
②報 酬 依頼者が得た経済的利益(財産的価値)の11パーセント前後(消費税込み)
以上が一つの目安です。
ただし、経済的利益として、有価証券であれば基本的に時価、不動産であればその評価自体が争いとなっている場合には固定資産税評価額や路線価ではなく実勢価格が基準となりますので、その点はご注意ください。
なお、先に述べたのは一例です。受任する際には、個別事情なども検討し、必ず契約書を作成して事前に費用の概算をご説明します。
このように、遺産分割事件を弁護士に依頼すると、かなりの費用が掛かります。この点を踏まえた上で、弁護士に依頼するか、それとも多少譲歩して協議に応じるかを判断してください。
4遺留分侵害額請求関係
- 父が亡くなりました。遺言があったのですが、明らかに私の受け取る分が少ないです。何とかならないのでしょうか。
- 受け取る財産額が平等でないというのは、つらいですよね。
そのような場合、遺留分侵害額を請求する方法があります。
仮に、お父様が遺した遺言が、あなたの遺留分を侵害しているようであれば、多くの遺産を受け取った相続人に対し、遺留分侵害額を請求する書面を発出することになります。
ただし、遺言の内容が、遺留分を侵害しない場合には、遺言の内容が不平等であったとしても、その内容通りに遺産を分割するしかありません。
この遺留分侵害額の計算ですが、不動産の評価方法や特定の相続人が生前に多額の贈与を受けていた場合(特別受益)など、その算出方法は必ずしも容易ではありません。
また、遺留分侵害額請求は、民法1048条により、相続があったこと及び遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ってから1年以内に行使しないと、請求権が時効により消滅してしまいます。
ですから、書面の発出を含め、弁護士にご相談されることをお勧めします。 - 遺言がある場合には、たとえ不平等であっても、遺留分しか請求できないのでしょうか。
- 遺留分だけでは納得できないのは、むしろ当然かもしれません。
さきほども少し触れましたが、そもそも遺言自体が無効であるとして裁判を起こす方法がありますし、逆に言いますと、それ以外の方法は基本的にありません。
ここでは、遺言能力の有無や法律が定める方式に則って作成されているか、自筆証書遺言であれば遺言者が全文自筆で記載したのか(自筆性)、といった点を吟味して、無効の可能性があるのなら、遺言無効確認の裁判を提起することになります。
ただし、この裁判は、おそらく弁護士に依頼しないと対応は難しいと思われますし、勝訴するのは必ずしも容易ではありません。公正証書遺言であれば、なおさらです。
本当に提訴するかどうかは、よくよく弁護士とご相談の上、お決めください。
5相続放棄関係
- 父が亡くなって約1年が経ちました。ようやく落ち着いてきた矢先、消費者金融から亡父の相続人として債務を弁済するよう書面が来ました。支払わなければいけないのでしょうか。
- それは、さぞ驚かれたでしょう。
そのような場合、相続放棄を行って債務を免れることができる可能性があります。
相続放棄は、相続があったことを知ってから3か月以内に行う必要がありますが、必ずしも亡くなってから3か月以内に行う必要はありません。
もっとも、既に相続発生から3か月以上経過している場合には、相続放棄の書面の書き方に若干の注意を要しますので、弁護士へご相談された方がよいと思います。 - 父が亡くなりました。若干の遺産はあるようですが、父とは生前に色々とあり、また、他の相続人ともあまり関わりたくありません。どうしたらよいでしょうか。
- このような場合にも相続放棄が有効です。
相続放棄を行った場合、その方は、最初から相続人でなかったことになりますので、遺産分割協議に参加する必要はありませんし、逆に参加することはできません。
たとえ親族であったとしても、一生関わり続けなければならないものでもありません。相続放棄を、人生の一つの区切りと捉えることもできるかもしれません。
6配偶者居住権など
- 先日、夫が亡くなりました。遺産の大部分は、現在私が住んでいる不動産が占めており、預貯金は多くありません。この年ですので、今さら引っ越ししたくないのですが、子どもは、家を相続するなら代償金を払ってほしいと言ってきます。私は、不動産を売るしかないのでしょうか。
- それは大変心細い状況ですね。
平成30年の民法改正により新設された制度で、被相続人の死亡後も残された配偶者が、住み慣れた住居に無償で終身(または一定期間)居住し続けることができる「配偶者居住権」という権利があります。令和2年(2020年)4月1日以降に開始した相続から適用されています。
この制度は、配偶者が、所有権を取得するよりも低い価額で居住権を確保できるようにすることで、預貯金などの他の財産をより多く取得し、その後の生活の安定を図ることを目的としています。
この権利を主張することによって、不動産を売却しなくても、住み慣れた家に住み続けることができるかもしれません。 - 「配偶者居住権」のことを、もう少し詳しく教えてください。
- 配偶者居住権は、配偶者のみが取得することができます(これを「一身専属性」といいます。)。
配偶者が居住建物の所有権を取得する場合、その価額が高額になると、他の財産(金銭等)を十分に受け取れず、生活費が不足する事態が生じてしまいます。
配偶者居住権は、所有権よりも低く評価されるため、居住場所を確保しつつ、生活資金としての他の財産をより多く分配できるよう、遺産分割等の選択肢を広げるために作られました。
また、子のある再婚者が、後妻に居住権を認めつつ、建物の所有権は実子に継がせるといった活用も期待されています。 - 少し安堵しました。それでは、私は、「配偶者居住権」を取得できるのでしょうか。
- とても気になりますよね。配偶者居住権取得の要件をご説明します。
①被相続人の配偶者であること
あなたが、夫と法律上の婚姻関係にあったことが必要です。内縁関係であった場合には、取得できません。
②相続開始時に被相続人の所有建物であること
夫が所有していた建物に限られます。借家であった場合には、配偶者居住権は発生しません。
③相続開始時に配偶者が居住していたこと
あなたが、その建物に生活の本拠を置いていたことが必要です。建物の一部に居住していた場合でも、権利の効力は建物全部に及びます。
④単独所有または配偶者との共有であること
夫が、あなた以外の第三者と建物を共有していた場合には、配偶者居住権は成立しません。
⑤遺産分割、遺贈、死因贈与又は家庭裁判所の調停や審判のいずれかにより配偶者居住権を取得したこと
遺産分割は相続人間での話合い、遺贈及び死因贈与は配偶者居住権に関して遺言や死因贈与契約書がある場合、そして調停や審判は家庭裁判所における相続人間の話合いや、その話合いがまとまらなかった場合の決定を指します。
これらの要件を全て充たせば、配偶者居住権が成立します。 - それでは、この「配偶者居住権」が認められた場合、私は、具体的にどのようなことができるのでしょうか。
- 気になるところですよね。以下、ご説明します。
①無償の使用・収益
あなたは、居住建物の全部について、無償で使用及び収益をすることができ、建物の所有者に対してこの権利を主張できます。
②一身専属性と譲渡禁止
あなたのみに認められる権利であり、第三者に売却・譲渡することはできません。
③存続期間
原則としてあなたのご存命中(終身)ですが、遺産分割協議や遺言、審判によって別段の期間を定めることも可能です。定められた期間の延長や更新はできません。
④居住継続の保障
あなたが、介護施設に入所したとしても、当然には消滅しません。
また、建物所有者の同意があれば、第三者に賃貸して賃料収入を得たり、権利を消滅させる代わりに金銭を受け取ることも可能です。
このように、「配偶者居住権」が認められると、あなたの生活は相当安定することが見込まれますので、是非とも一度弁護士にご相談ください。 - 話合いを経て、ようやく私の「配偶者居住権」を子どもたちが認めてくれました。このあとはどうしたらよいでしょうか。
- 配偶者居住権を第三者(建物の譲受人など)に対抗するためには、不動産登記が必要とされています。建物の所有者が、第三者に建物を譲渡してしまった場合、あなたの配偶者居住権が主張できなくなる可能性があります。
居住建物の所有者は、配偶者に対して設定登記を備えさせる義務を負います。登記には、存続期間や、第三者に使用・収益をさせることを許す定めがある場合はその旨が記載されます。
ですから、権利関係のトラブルを避けるため、取得後は速やかに登記手続を行うことをお勧めします。








